災害社会学
災害は理学や工学の研究対象と思われがちである。しかしながら地震や津波,あるいは洪水・土砂の崩落などの自然現象に対して社会の防災力が万全に対応できれば被害は発生しない。言い換えるなら,①被害の発生を抑止するための予防的な備え,②被害が万一発生してもそれを最小限にとどめるための事前の備え,③それにも関わらず災害が発生した場合の効果的な緊急対応,④そして被害が拡大した後に社会を復元させていくための努力,といった社会の側の対応(防災力)いかんによって災害の規模は大きく左右されるのである。つまり,災害因は理学・工学的現象であるのに対し,災害は社会的現象として考えることができる。災害が社会的現象であるならば,社会の側の対応によってその被害を合理的に制御することもできる。災害による生命や財産の被害を軽減するために社会学者はどのような問題に取り組んでいるのかを本講義ではできるだけ体系的に講じる。