社会学理論
<ポスト産業社会とネットワークの理論>
20世紀の終盤からグローバリゼーションと情報化が急速に進み,私たちの社会もそれを解明する社会学も大きく変化しつつある。世界の基盤となる資本主義経済は,それまでの工業中心から金融や科学技術・サービスを中心とするポスト産業社会へとシフトし,効率重視の企業や行政の組織は,新たな価値や意味の創造を志向するネットワークへと転換しつつある。他方で,欧米をモデルとしてきた近代化に激しく対立する潮流も大きくなりつつある。これらは一時的な混乱ではなく,今後,私たちが生きていく社会の前提になる可能性が大きい。この講義では,これらの変動への理解を深める上で重要な理論を紹介しながら,歴史への考察を深めていきたい。
(1)資本主義は16世紀に誕生した当初からグローバルな本質をもっていた。ブローデルの「世界=経済」やウォーラーステインの「世界システム」の理論を紹介しながら,その現代的な意義について考察する。
(2)長らく近代化は西欧社会を中心的モデルとして理解されてきたが,そこには普遍的な合理化のプロセスとともに,非欧米社会も含めた固有の適応プロセスと移行の危機が発生した。ティリーの動員理論やトッドの歴史人口学を紹介しながら,1968年革命後の社会文化的マイノリティによる公共性やグローバル社会におけるアイデンティティに焦点をあてて考察を進める。
(3)20世紀末以来,情報技術の急速な発達により,社会の革新と破壊のメディアとしてネットワークの重要性が高まりつつある。社会ネットワーク理論の展開と現在の到達点までをたどりながら,受講者各自の問題関心との接続を試みる。